デザインマガジン🎈Balloon vol.15「コスメの話」と「文学における美の話」
ブランディング・UX・グラフィック・プロダクト・UI・Webサイトなどクリエイティブ全般をカバーするデザインコンサルティングスタジオ Balloon株式会社がお届けするデザインマガジンです。
メールマガジンにご登録されていない方はこちらからご登録いただけますとうれしいです！
デザインマガジンでは、上の句として「デザイン“以外”の話」、下の句として「デザインの話」をお届けします。では早速、「デザイン“以外”の話」から。
上の句：コスメの話
インスタグラムで美容系の投稿に間違えて♡を押してしまったが最後、やたら美容系の投稿がオススメされるようになってしまいました。流れに流れてくるコスメ情報。最初は邪魔だなあと思ってはいたものの、たしかに…そういえばコンシーラーの肌色では隠しきれないクマがいるんだよなあと思い、結局投稿を確認することに。
「赤みが気になる場合は緑のベース下地を★」「シミが気になる場合は赤のベース下地を★」とのことで、顔面に肌色を塗る前にさまざまな色を塗るのが良いらしい。なるほど補色である。補色の概念がっつりである。なるほど奥深いじゃないの？（コスメ沼に片足を突っ込むフラグ）
下の句：文学における美の話
美容について気を配る人がいるように、デザイナーは常にデザインする対象の「美」に気を配る職能だと思います。
絶対的な「美」の基準は無いにせよ、様々な創作物から、先人の考え方に接するのは重要ではないでしょうか。
少し前に三島由紀夫の『金閣寺』を読みました。実際に起こった『金閣寺放火事件』を元に書かれた長編小説で、壮年の主人公が周囲との折り合いや自らの境遇に葛藤しながら、最終的に金閣寺を放火するに至った心の移り変わりが描かれます。
特徴的なのは、金閣をはじめ、花や自然、女性といった身の回りにあるものを糸口に、美しさについて様々な言及がみられる点です。いくつかを時系列順に書きだしてみました。
吃音である自分の不遇や、他人への羨望が強い冒頭ではこうした表現がみられます。
嘲笑というものは何と眩しいものだろう。…光のはじける葉叢のように、燦然として見える
しかるに有為子の顔は世界を拒んでいた。…不動の顔はただその光りに洗われていた。
私が人生で最初にぶつかった難問は、美ということだった…自分の未知のところに、すでに美というものが存在してあるという考えに、不満と焦燥を覚えずにはいられなかった。美がたしかにそこに存在しているならば、私という存在は、美から疎外されたものなのだ。
美というものは、こんなにも美しくないものだろうか。
美ということだけ思いつめると、人間はこの世で最も暗黒な思想にしらぶしらずぶつかるのである。
その後、物語的なイニシエーションを経て自らと向き合った彼は、金閣寺を放火する決心をします。そうした心情の変化に伴って、美しさに対する姿勢も少しずつ変化がみられるようになります。
嘗てあのように私を感動させた細部は、ひと色の闇の中に融け去っていた。…この暗いうずくまった形態のうちに、私が美と考えたものの全貌がひそんでいた。
そして美は、これら各部の争いや矛盾、あらゆる破調を統括して、なおその上に君臨していた！…美は細部で終り細部で完結することは決してなく、どの一部にも次の美の予兆が含まれていたからだ。
虚無がこの美の構造だったのだ。
捉えどころ無く漠然と相対していた「美」について、いよいよ金閣寺を放火するとなった主人公はひとつの結論めいたものを出すと同時に、物語も終わりを迎えます。
個人的に「美」というものは、何かに付与された「属性」ではなく、主体と客体の「関係性」のうちにのみ存在すると捉えています。その点において、三島が描く美に関する文章には、共感できる部分が多くありました。
そうした「美」をひとつのデザインとして定着させ、具体化するのは骨の折れる作業ですが、「美」と向き合う職能として、今年も真摯にデザインに取り組んでいきたいと思います。
『金閣寺』が非常に良かったので、同時期に書かれた短編集の『女神』も読みました。こちらも（特に女性の）美しさについて捉えられておりおすすめです。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございました！デザインマガジン🎈Balloonは毎月２回配信予定です。本メールマガジンの感想や質問などをSNSに投稿していただけると嬉しいです。次回配信もお楽しみに！
すでに登録済みの方は こちら
読者限定の内容も逃しません。