デザインマガジン🎈Balloon vol.12「女性らしさ」と「カンヌグランプリを獲得した”本来の肌色”」
ブランディング・UX・グラフィック・プロダクト・UI・Webサイトなどクリエイティブ全般をカバーするデザインコンサルティングスタジオ Balloon株式会社がお届けするデザインマガジンです。
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デザインマガジンでは、上の句として「デザイン“以外”の話」、下の句として「デザインの話」をお届けします。では早速、「デザイン“以外”の話」から。
上の句:女性らしさ
2023年最初に読んだ小説は石田夏穂『我が友、スミス』でした。ロイ・リキテンスタイン風の女性が書かれた黄緑色の表紙で、芥川賞候補になった作品というと「あー、あれね」となる人もいらっしゃるかもしれません。あらすじはこんな感じです。
「別の生き物になりたい」と筋トレに励む会社員・U野ですが、大会で結果を残すためには筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならなかった――。
女性のボディビル大会の映像を見ていると独特のドレスコードみたいなものを感じていたけれど、あの世界ならではのルールや矛盾みたいなものがある。そんなことを押し付けがましくなく、コミカルかつ淡々と教えてくれる稀有な小説でした。フェミニズム小説よりも筋肉文学と表現したくなるこの不思議な気持ち。
某思想家・武道家の方曰く「筋肉だけにフォーカスした小説はたぶん文学史上初めてだろう」とのことですが、絶対に読まずに書いた書評だろうと思わずにはいられませんので、ぜひお時間ありましたら書評の具合を判断するためにも読んでみてください(?)。
下の句:カンヌグランプリを獲得した"本来の肌色"
社会の仕組みやルールだけではなく、テクノロジーにも私たちが気づかないような無意識の差別が潜んでいます。
昨年「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」の「モバイル部門」でグランプリを受賞したGoogleの「Real Tone(リアルトーン)」は、誰もが本来の肌の色で写真を撮ることができるようにしたものです。
© Google LLC
そんなことを聞くと、「これまでも綺麗な(忠実な)写真は撮れていたじゃないか」と思われる方もいるかもしれませんが(実際僕もそう思っていました)、このプレゼンテーションを見て、いかに自分の想像力が乏しいかを痛感しました。
Googleの資料は以下のようなものです。有色人種の人たちが、これまでいかに写真映りで苦労してきたかが窺い知れます。
© Google LLC
こうした肌色の再現にまつわる問題の理由は、1975年に考案された肌の色の尺度「フィッツパトリックのスキンタイプ(下図)」の影響だと考えられています。
© Wikipedia
もともと皮膚科医のためのこの尺度は、肌を色素沈着と日焼けに対する反応をもとに6つに分けるものです。紫外線に対する耐性を示す指標として使われており、人種などによる肌の色の違いを分類するために設計されたわけではありませんでした。
にもかかわらず、人工知能や機械学習アプリケーションのトレーニングとして用いられてきたのです。結果としてAIが有色人種をうまく識別できない原因となっていました。
そこでグーグルは……、