デザインマガジン🎈Balloon vol.16「もう自分はSFが読めないのか」と「ビジュアル・フューチャリストの話」
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デザインマガジンでは、上の句として「デザイン“以外”の話」、下の句として「デザインの話」をお届けします。では早速、「デザイン“以外”の話」から。
上の句:もう自分はSFが読めないのか
Science Fiction(サイエンス・フィクション):科学が進んだ未来の社会とか宇宙とかを舞台とする、空想的な小説。空想科学小説。
SF小説を手に取ったのは大学生になってからだった。SF独特の語り口に苦手意識があったので、友人におすすめを聞いてみた。まず勧められたのが『夏への扉(ロバート・A・ハインライン)』、その次が『虐殺器官(伊藤計劃)』。そのあと何冊か読んだあと、しばらく読まなくなって、また最近読んでみるかと手をのばしてみた。『なめらかな世界と、その敵 (伴名 練)』、『紙の動物園 (ケン・リュウ)』。うーん、しかしなんだかしっくりこない。トム・クルーズ主演の『All You Need Is Kill』という映画は楽しく鑑賞できたところから推測するに、自分には空想力が足りなくなってしまったのかもしれない。ちなみに『三体(劉 慈欣)』はまだ読んでいないので近々挑戦してみたい。
下の句:ビジュアル・フューチャリストの話
SFにおけるデザインで真っ先に思い浮かぶのはシド・ミードです。プロダクトデザインを学び始めた頃、彼のスケッチをお手本に、できる限り数多く模写するように言われたことをよく覚えています。
プロダクトのデザインスケッチプロセスにおいて重要なのは、(技巧だけではなく)既存の商品に無いような、新しいアイデアをいかに見つけられるかという点だと思います。既視感のある形をいくら上手に描いてもデザイン開発においてはあまり意味がありません。コンセプトに基づいた、他の商品には無いアイデアがなんらか表現されている必要があります。
その観点からも、「SF映画のデザイン」を描いたシド・ミードを模写する事は非常に大きな意味があったと思います。現在の技術や環境では存在しないサイエンス・フィクション世界における造形を、その思考プロセスを推測しながら追体験することが出来るからです。
©︎SYD MEAD INC.
もともとFord Motorの工業デザイナーとして出発したミード氏は1970年に独立後、未来的な造形手腕が評価され、SF映画の重要な部分のデザインを多く担当します。
「ブレードランナー」(1980年)のスピナーと都市デザイン、「TRON」(1980年)のライトサイクル、「2010年宇宙の旅」(1983年)ではレオーノフ号など、作品の世界観を形成する重要なデザインを手がけ、自らを「ビジュアル・フューチャリスト(Visual futurist)」と称していました。
©︎SYD MEAD INC.
上の2点は映画「TRON」のためのデザインスケッチです。特に右側のライトサイクルは、マフラーやラジエーターなどの機構の一切を隠したシンプルな形状で、滑らかな丸みを帯びた造形が特徴的です。
ライダーウェアは甲冑を思わせるようなやや無機的な印象がありますが、前傾姿勢をとると人とモビリティが一体となる形状の連続性が強調され、今みてもフューチャリスティックなデザインと言えるのではないでしょうか。
私たちデザイナーは、(たとえそれがささやかなものであっても)デザインする対象に何かしらの新しい価値を付与するべく奮闘するものです。そのためには、アイデアを膨らませるスケッチのプロセスは不可欠です。アプローチは様々ですが、先人の辿った思考のプロセスをスケッチによってトレースするというのは個人的にはかなり効果的だと思います。
シド・ミードに関する書籍は、今では入手困難なものが多いですが、ウェブサイトには氏のこれまでの作品が見られるギャラリーが設置されています。
また、奈良 蔦屋書店では『シド・ミード回顧展2020 SYD MEAD RETROSPECTIVE 2020』が開催中でした。キュレーターによるアーカイブ研究を中心に、新たに発掘されたスケッチをはじめ、プロダクト、ポスター、書籍、モデラーたちによるモデルキット作例が展示されています。
希少な書籍のほかにも、原寸大のスケッチを直接みることが出来る貴重な機会です、関西の方は是非間近に見に行かれることをおすすめします。
©︎SYD MEAD INC.
おわりに
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