デザインマガジン🎈Balloon vol.11「ガジェットが買えない理由」と「タッチパネルと物理ボタンの使いやすさの話」

vol.11「ガジェットが買えない理由」と「タッチパネルと物理ボタンの使いやすさの話」
Balloon Inc. 2023.11.01
誰でも

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デザインマガジンでは、上の句として「デザイン“以外”の話」、下の句として「デザインの話」をお届けします。では早速、「デザイン“以外”の話」から。

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上の句:ガジェットが買えない理由

最近気になっているのがこちら。elgatoのSTREAM DECK (MINI)。

キーボードショートカットとは、バイバイ。ホットキーアクションはマクロをキーに詰め込み、即座に認識してエラーなく展開します。アプリとウェブサイトを起動し、フォルダを開き、事前に準備したテキストにアクセスできます。フィルム編集、ミュージックプロダクション、またはフォトグラフィックワークフローを流れるような効率で進めましょう。オプションは、エンドレス。

各ボタンに任意のコマンドを設定できるらしく、「このボタンを押せばボタン1つでスクショが撮れる」「このボタンを押せば設定したサイトに一発で飛べる」といった作業ができていろいろ捗るらしい。たしかに、同じ作業を3回以上繰り返すなら自動化できないか検討しはじめる自分には向いているかもしれません。

しかし、「スクショを撮るときにボタン3つ同時押ししていたものが、これがあれば1つのボタンを1回押すだけでOK」と言われても、「ボタン3つ同時押しくらいやりますやん」と思ってしまう。任意のサイトにサクッと遷移したいならキーボードだけで完結するRaycastでクイックリンクを登録したほうが早い気がする。ぐぬぬ。効率厨の精神が、効率アップを謳っているはずのガジェット購入の邪魔をする……

イケてるガジェットをゲットしてみたいのにどうも自分には必要なさそうで困ってるという話でした。動画編集をしている人にとってはかなり便利らしいので、そのために動画編集をや始めむ(反語)。

(ちなみに志水さんは先日、Nothingのサブブランド cmf のWatch proを買ってました)

志水良🎈Balloon Inc./CEO/アートディレクター
@shimizuryo
Nothingのサブブランド cmf のWatch pro 、価格が控えめなだけにあまり期待してなかったけど、想像以上によかった。

・本体は金属(アルミ?)の削り出しっぽい。それだけでモノとしての存在感が全然違う。
・ドットによるフォントや、グレーとオレンジベースのデザインなど、 Nothing…
2023/10/24 17:28
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下の句:タッチパネルと物理ボタンの使いやすさ

こうしたガジェットを見るにつけ、いつも
「タッチパネルと物理ボタンは、どちらが使いやすいのか?」
という疑問が頭をもたげます。

スマートフォンが普及して以来、身の回りの製品から次々と物理ボタンが消え去っていきました。シンプルで綺麗だなと思う反面、触感のフィードバックが無いことが時折ストレスにもなります。

最近発表された「iPhone 15 Pro」では、これまでサイドにあったスライド式の「着信/サイレントスイッチ」が、物理ボタンの「アクションボタン」へ変更されました。その名称からも分かるように、ユーザーが自分でアクションを登録できるボタンです。

デザインにもわずかながら変更が加えられました。スライドスイッチからボタンになったため、レイアウトや比率が調整されています。

下図はサイドから見たボタン類のおおよその比率を割り出したものですが、アクションボタンは音量ボタンと同じ高さ、幅はおよそ半分となっています。この幅はスライドスイッチと同じ寸法のようですね。

iPhoneには、ウィジェットやショートカットなど類似する機能がすでに提供されているにもかかわらず、「物理ボタン」を採用したのは非常に興味深い点です。

Appleは2016年に有機EL画面とタッチパネルを兼ねた「Touch Bar」を発表しました。これは5年ほどで廃止されましたが、その理由として「ユーザーが物理的な感触を好んだから」だと答えています。

一方でiPhoneを普段から使いこなしているユーザーが大半な訳ですから、その理由だけでは説明できないUI上の(致命的な?)何かがあったと考えざるを得ません。

この「Touch Bar」ですが、実際に使ってみると、常に変化するボタンによって想像以上に認知負荷が高い状態を強いられます。アプリケーションを切り替える度にボタンの内容を確認しなければならず、この点だけでも活用のハードルは非常に高いです。結果として全く使わなくなってしまいました(し、市場から姿を消しました)。

そうした観点から考えると「iPhone 15 Pro」の「ユーザー自らアクションを登録する」というステップを挟むことで認知負荷を軽減し、物理ボタンとタッチパネルとのシームレスな操作体系をめざす、というのは理にかなったUIデザインなのではないでしょうか。

UIデザインの変容を見てみると、技術の進歩に対して、いかに人間(の身体性)が変わらないかということを思い知らされます。

昨日(10/31)発表された新しいMacBook Proの動画では、その処理速度のスピードを表現するために「人間の手を増やす」という演出がありました。

<b>© Apple Inc.</b>

© Apple Inc.

<b>© Apple Inc.</b>

© Apple Inc.

工業デザインの発展は、人間工学に代表されるように人間をどう捉え、いかに扱うかという視点と不可分のものです。技術の進歩とUIの進化に私たちが追いつくためには、身体を拡張していく方が有効になるのかもしれません。

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おわりに

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