デザインマガジン🎈Balloon vol.30 「SNSで何度でも告知するためのマインド設定」と「iPhone 16のデザインが変わらない」

vol.30「SNSで何度でも告知するためのマインド設定」と「iPhone 16のデザインが変わらない」
Balloon Inc. 2024.09.17
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デザインマガジンでは、上の句として「デザイン“以外”の話」、下の句として「デザインの話」をお届けします。では早速、「デザイン“以外”の話」から。

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上の句:SNSで何度でも告知するためのマインド設定

SNS運用の一環として、アカウントから仕事やイベントを頻繁に告知することは重要な戦略となっている。かつては同じ情報を繰り返し発信することでフォロワーに嫌われるのではないかという懸念があったが、現在はその考えを一新し、「何度でも告知する」という方針を採用している。

この方針転換の背景には、現代のSNSアルゴリズムが必ずしも時系列順に投稿を表示しないという事実がある。しかし、それ以上に重要なのは、告知に対する自身のマインドセットの変化だ。

具体的には、以下のような考え方を取り入れている:

  • 初回の告知で実際にアクションを起こす人数は限られている。

  • 複数回の告知を通じて、徐々に関心を高めていく可能性がある。

  • 新たな告知が、以前の告知を見逃した人々にリーチする機会となる。

このマインドセットの変更により、「告知によって嫌われるかもしれない」という懸念から、「告知によってアクションを促せるかもしれない」という前向きな姿勢へと転換した。結果として、告知作業の心理的負担が大幅に軽減された。

重要なのは、頻繁な告知に否定的な反応を示す人々は、そもそも主要なターゲット層ではないという認識だ。ただし、これは彼らを完全に無視するということではなく、単にマーケティング戦略上の優先順位を調整したに過ぎない。

この経験から、実際の行動を変えることなく、単にマインドセットを変更するだけで、作業の心理的コストが随分軽減された。このような心理的アプローチの重要性は、SNS運用に限らず、様々なビジネス場面で応用可能な洞察である(はずであるが、まだ新たなマインドセットの変更方法には出会えていない)。

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下の句:iPhone 16のデザインが変わらない

今年もAppleのイベントでiPhoneの新機種が発表されました。Apple Intelligenceのために新たに設計されたと謳われたiPhone 16とiPhone 16 Plusは、驚くほどにこれまでのiPhoneと変わらない印象でしたね。

購入を検討する側にとっては、(見た目の)デザインが変わってくれた方が購入する理由になるかもしれません。特に今回はApple Intelligenceというインパクトの大きな機能実装を前提とした設計のため、印象が変わらないことを残念に思った方もいるのではないでしょうか。

ただよく考えてみると、16回もバージョンアップを重ねているにもかかわらず同じ印象を維持している、というのはハードのデザインとしてみるととても希有な例だと思います。その間、画面は巨大化し、カメラレンズも大きくなって個数も増えました。ホームボタンは削除され、face IDに取って代わりましたし、イヤホンジャックすら最新のiPhoneにはありません。

それでもiPhoneはiPhoneらしさを保ってい(ると僕は思い)ます。それは10年以上続くプロダクトのシリーズとしては、驚くべき事です。

一方で印象は変わらないながらも、ディティールについてはかなり変化が見られることに気付きました。今回はそんな「何度も見せること」で獲得したiPhoneらしさのデザインについてお話したいと思います。

最初に感じた違和感は、以下の写真でした。2012年に発表されたiPhone 5と先週発表されたiPhone 16 Proを並べて比較したものです。

iPhone 5の方が角の丸み(Rアールと呼んだりします)が小さいですね。iPhone 16 ProはiPhone 5と比べるとかなり大きく丸みが取られていることが分かります。この丸みは、当然表の画面の形状にも影響しますから、丸みが大きければ大きいほど画面のサイズは(角の端が削られるため)小さくなります。せっかく多くの情報を一度に提示しようと画面を大きくしたのにもかかわらずです。

画面大型化のニーズははっきりしていますから、もし効率的に最大限の画面サイズを実装しようとすると、角の丸みはiPhone 5の時と同様に小さいままの方がいいはずです。実際にiPhone 5の時点で実装ができていることから、16 Proでも同様に小さい丸みにすることは可能だと思われますし、他のメーカーではサイズに依らずできる限り角を小さい丸みによってデザインしている機種も多くあります。

そうした中、Appleはなぜ角の丸みに変化を持たせているのでしょうか。またそれはどういった基準によってなされているのでしょうか。Appleから公開されている図面を元に探っていきたいと思います。(現在入手できる最新版の図面はiPhone 15 Proでしたので、そちらとiPhone 5を比較検討しています。)

こちらはiPhone 5の背面の図面の一部を拡大し、パーツの配置や造形の意図を推測するためにグリッドや補助線を引いたものです。Appleの製品の特徴と言えるのが、製品の角の丸みを単純な円弧を用いるのではなく、徐々に曲率(円弧の大きさ)を変えながら直線と馴染ませる「緩和曲線」でつないでいる点です。それにより、直線と円弧が滑らかなカーブで接続され、自然な丸みを与えることができます。

そしてそのカーブの基準となるのは、カメラレンズの位置と径のようです。カメラレンズの中心から垂直にラインを引き、外形と接する点と中心の距離を半径とした円がiPhone本体の角の丸みと近似しています。(iPhone 5のカメラ位置はやや中心側によっているため、円の左側と外形との間にはやや隙間があるのは気になる点ですね)

一方こちらはiPhone 15の同じく背面図です。カメラのレンズ径がかなり大型化しているのがわかりますね。iPhone 5と比べると実に250%以上の拡大率となります。径が大きいため、カメラ中心を本体の端に寄せる限界があり、そのためレンズの配置が大きく内側に寄っていることがわかります。

結果、iPhone 5の時と同様に「カメラレンズの中心から垂直にラインを引き、外形と接する点と中心の距離を半径とした円」を描くと、より大きな円弧が出現します。こちらもこの円弧を近似とした緩和曲線を用いることでiPhoneの角の丸みを規定しているようです。

実寸で比較するとこのようになります。iPhone 15の方が角の丸みが大きく、かなり柔らかな印象を与えると思います。レンズの径も大きくなっている事から、背面から見た時の不自然さはあまり無いようです。これはカメラレンズ自体が本体の背面から突出していることもあるのでしょう。実際のモノで見た時のカメラレンズは、線で描かれた図面よりもはるかに強い存在感を示します。

一方で、緩和曲線の始点と終点が同じサイズになるよう、iPhone 5を138%ほど拡大して重ねた図がこちらです。両者のカーブはほぼ一致することが見て取れます。同じ緩和曲線の相似形を用いて、角の丸みを処理していることが分かります。(ちなみにAppleの他の製品にも、同じ曲線の相似形を用いた例が観察されます)

こうしてみると、iPhoneのデザインは初期のバージョンから人の手に馴染むカーブを吟味し、形作っていったように思えます。加えて、その後に発表される異なるサイズにもその相似形を踏襲させることで、シルエットとしての「iPhoneらしさ」を表現し、そのアイデンティティを獲得していったと言えるのではないでしょうか?

Apple製品のデザインは素晴らしく、新しい発表の度に心踊るものも数多くあります。一方で、変わらないディティールとそれによって実現するAppleのアイデンティティにも、美学を感じることが出来る素晴らしいデザインだと思いました。

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おわりに

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