デザインマガジン🎈Balloon vol.6

vol.06 「ガラスの天井と崖の話」と「ヒロシマ・アピールズの話」(600字+1100文字くらい)
Balloon Inc. 2023.08.15
誰でも

ブランディング・UX・グラフィック・プロダクト・UI・Webサイトなどクリエイティブ全般をカバーするデザインコンサルティングスタジオ Balloon株式会社がお届けするデザインマガジンです。

デザインマガジンでは、上の句として「デザイン“以外”の話」、下の句として「デザインの話」をお届けします。では早速、「デザイン“以外”の話」から。

***

上の句:ガラスの天井と崖の話(デザイン“以外”の話)

「ガラスの天井」と聞くと思い出す話があります。ヒラリー氏とトランプ氏の選挙戦終盤の話。ヒラリー陣営は勝利宣言に向けて会場の準備を進め、会場のガラスの天井(壁)越しに打ち上げた花火を見るという痛快な演出を準備していました。しかしながら結果は敗北。花火は上がらず、ヒラリー氏が「ガラスの天井を打ち破れなかった」と敗北宣言をして終わってしまいました。テレビでコメンテーターの方が言っていたものでいま検索してもソースは不明ですが、本当ならば随分と皮肉な話です。最近、「ガラスの崖」という言葉があることを知りました。

「ガラスの崖(glass cliff)」とは、経営不振や不正などにより組織が危機的状況のときほど、女性がCEOなどのトップの地位に置かれやすいという概念である。
出典元がJOCだなんて皮肉すぎィ https://www.joc.or.jp/about/women-leader/words/02.html

咄嗟に某大学の女性理事長を思い出したけどちょっと違う感じがしますね。それよりは前述の出典元であるJOCの会長の変遷(元総理大臣♂→政党を離党して就任した元大臣♀→プーチンとは友達ではない元全柔連会長♂)のほうがしっくりきます。

ガラスのハイヒールでお散歩していたはずなのに、天井も崖もガラスになってしまいました。かぼちゃの馬車もガラス製になってしまうと困ります。ちょっと今の時期は修理に出すのがはばかられるので。

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下の句:ヒロシマ・アピールズの話(デザインの話)

社会の構造を反映してか、デザインの業界でも女性が活躍しづらいという話しはよく耳にします。そうした中でも特異な輝きを放つのはグラフィックデザイナー、アートディレクターの故・石岡瑛子氏です。

資生堂宣伝部でデザイナーとしての経験を積み、1970年に石岡瑛子デザイン室を立ち上げる。パルコや角川書店などの広告で活躍した後、それまでのすべてのキャリアを捨ててアメリカへ。映画や演劇へ活動の舞台を移し、アカデミー衣裳デザイン賞、アルバムジャケットのデザインでグラミー賞を日本人として初受賞するなど、国際的な評価も高いクリエイターです。

衣装や舞台など素晴らしい作品は数え切れないほどあるのですが、個人的にもっとも印象深いのはヒロシマ・アピールズ 1990「X像の沈黙 」のポスターデザインです。

「ヒロシマ・アピールズ」ポスターとはJAGDA(公益社団法人日本グラフィックデザイン協会)と財団法人広島国際文化財団が「ヒロシマの心」を訴えるポスターを共同制作し、内外に平和を呼びかけるキャンペーン。1983年から始まったこの取り組みは、JAGDAを代表するデザイナーが毎年1枚、ボランティアでポスターを制作しています。

1990年に石岡瑛子氏がデザインした「X像の沈黙」は、その扱ったモチーフが大きな物議を醸し、現在でもJAGDAのウェブサイトからは作品の存在すら確認できません。2021年に開催された氏の展覧会でも展示はされていたものの、その作品だけは撮影禁止の扱いとなっていました。

京都dddギャラリー第230回企画展「SURVIVE - EIKO ISHIOKA /石岡瑛子 デザインはサバイブできるか」

京都dddギャラリー第230回企画展「SURVIVE - EIKO ISHIOKA /石岡瑛子 デザインはサバイブできるか」

そのヒロシマ・アピールズ 1990「X像の沈黙 」のポスターには、中央に有名なネズミのキャラクターを思わせる像が、宙に浮いたように首から上だけ描かれています。白い手袋をした両手で自分の目を覆い、口元は固く結ばれています。

X像は、両手でしっかりと目を覆い、口を固く結んで強い意志表示をしながら、ふたつの意味を演じることになった。ひとつは「HIROSHIMAの悲劇を2度と見たくない」という人類最大の悲劇再来へのwarningであり、もうひとつは、その裏側の「HIROSHIMAの悲劇に目をつむるのは人間にとって最も重い罪悪である」という見ないようにする行為への警告である。
 ヒロシマ・アピールズ 1990 / 石岡瑛子

恐らくほとんどの人が「ミッキーマウス」を連想するこの作品は、普段の愛想の良さからは想像もつかないほどの緊張感を見る人に与えます。国際的に知られたキャラクターを巧みに引用し、アメリカによる原爆投下の加害性を風刺に富んだ手法で表現しました。

災害や戦争など大きな事象に対して、デザインが果たせる役割は大きくありません。

それでも、国や人種を越え、年齢や性別も超えて平和への考察を喚起することに成功したこの作品は、昨今のような社会情勢にも共鳴する素晴らしいクリエイティブだと思います。

・・・

石岡瑛子氏について調べていると、北九州市立美術館で「石岡瑛子 I デザイン」という展覧会が開催されるようです。2023年9月9日~11月12日まで。興味のある方は是非、感想を聞かせてください。

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おわりに

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