デザインマガジン🎈Balloon vol.2
ブランディング・UX・グラフィック・プロダクト・UI・Webサイトなどクリエイティブ全般をカバーするデザインコンサルティングスタジオ Balloon株式会社がお届けするデザインマガジンです。
デザインマガジンでは、上の句として「デザイン“以外”の話」、下の句として「デザインの話」をお届けします。では早速、「デザイン“以外”の話」から。
上の句:キンボールの話(デザイン“以外”の話)
キンボールというニュースポーツがあります。室内で実施し、直径122cmのゴム風船のようなボールを床に落とさないよう、チームで協力し合う競技です。(動画はこちら https://youtu.be/gnMPuKysWvI )
今回お話したいのはルールではなく、ボールについて。このボールはゴム風船(コンプレッサーで空気を入れて膨らませる)の外側に布のカバーを被せたものです。このゴム風船の部分がめちゃめちゃ脆い。ルール通りに腕でボールを弾いたらその衝撃で割れる、挙句の果てには何もしてなくても割れる。「ボールはともだち」とか言ってる場合じゃないくらい、とにかく割れる。しかも、昨今の材料費高騰の煽りをモロに受けて値上がりまでしている。
冒頭でお話したように直径122cmのビッグサイズのボールを体育館内で使用する競技なので、キンボールの用具を購入するのはたぶん個人よりも施設であったり学校であったりが多いんじゃないかなと推測します。となると、「値上がりしたので購入を見送ります!キンボールはやめます!」なんてことになりそうです。
道具がないとできないというのは当然のことなのですが、こうしてニュースポーツとの接触頻度が下がっていくと、結局のところボールが1つあれば実施できるサッカーなどのような昔ながらのスポーツのほうが長く生き残っていくんじゃないかなと考える今日このごろです。
下の句:パーソナルスペースの話(デザインの話)
キンボールという種目を初めて知りました。特徴的なのは直径およそ120cm、重さ1kgの巨大なボールですね。知る限り球技の中では最大級のサイズでは無いでしょうか?
今回はこの「サイズ」に着目しました。モノをデザインする時、どれくらいの大きさにするかはとても重要です。内部の機構はおさまるのか、持ちやすさや扱いやすさなど、ユーザビリティにも大きく影響します。キンボールの競技中の動画を見ると、他の球技に比べて圧倒的にコンタクト(身体接触)が少ないですね。これは明らかに(大きな)ボールサイズによるものでしょう。
このボールの直径120cmという距離は、パーソナルスペースにおける個体距離と社会距離のちょうど境界にあたります。
パーソナルスペースとは、他人に侵入されると不快に思う領域(個人の身体からある一定の空間)を指します。相手が家族やパートナーであればそうでもないですが、知らない人から意味なく身体を寄せられると強いストレスを感じますよね。
このように相手との関係性に応じてパーソナルスペースは分類されるのですが、キンボールは球技にしては不釣り合いなほど巨大なボールサイズによって、他者との間に適切な距離が自然に保たれるような設計がなされているようです。これがもしバスケットボール大のサイズだとしたら全く違う競技になりそうですね。モノのサイズがもたらす影響の大きさがうかがえます。
ちなみに球技の中でもっともボールのサイズが小さい種目は「スカッシュ」と「バスケットピンポン」だそうです。どちらも直径4cm程度とのこと。身の回りのモノを見るときに「サイズ」に注目し、その理由を推測してみるのも面白いのでは、とキンボールの試合を見ながら思いました。
パーソナルスペースについてもっと詳しく知りたい方は、アメリカの文化人類学者のエドワード・T・ホールの名著『かくれた次元』(日高敏隆・佐藤信行共訳、みすず書房、1970年)が詳しいです。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございました!デザインマガジン🎈Balloonは毎月2回配信予定です。本メールマガジンの感想や質問などをSNSに投稿していただけると嬉しいです。次回配信もお楽しみに!
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