デザインマガジン🎈Balloon vol.44「国連パビリオン」と「社会課題に手触りを与えるデザイン」

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国際連合(国連)のパビリオンは「人類は団結したとき最も強くなる(United for a Better Future)」をテーマに、30以上の国連機関が共同で出展しています。
メインのカラーは、国連のフラッグにも用いられているブルーを基調としており、ファサードには大きなガシャポンのような球体のオブジェが満たされた透明のデザインが目を惹きます。
円・球を一貫して用いたデザイン
特にデザインで興味深いのは、国連のシンボルマークのデザインモチーフである、円形、球体を一貫して用いた点だと思います。

そのモチーフの引用元は、国連のシンボルマークでしょう。国連の世界地図のシンボルは、北極を中心とした正距方位図法で描かれ、世界のすべての人々と国々を表し、特定の一国を強調しないよう配慮されています。
そのため本初子午線と180度経線が中央に配置されたデザインで、地図は南緯60度までが描かれ、5つの同心円は五大陸を表すと同時に、全世界を示唆しています。
こうした内部に照明が仕込まれた球体のオブジェが天井から吊り下げられていたり、


床にも同心円状のブルーの円によって、様々な関連機関が紹介されています。

壁も円形にくり抜かれ、それぞれにオブジェが展示されています。あまりに同じモチーフが繰り返されるので、やや過剰な印象すらありました。
その他にも「オーブ(球体)の部屋」などスケールの違いはありながら多様な社会課題の紹介が続きます。
抽象的なテーマにどう手触りを与えるか
国連は1945年に設立された193の国が加盟する国際機関です。
紹介されているテーマもそうなのですが、平和と安全の維持、気候変動対策、持続可能な開発、人権擁護など世界的な大きな課題を扱うため、かなり抽象度が高いのが特徴です。
そのため上記の展示の内容も、具体的な地域のテーマというよりも、全世界的な共通の課題を、偏りなく見せるという印象でした。
そうした課題が重要であることは言うまでも無いのですが、一方で自分達の普段の生活からかけ離れすぎた印象も拭えません。それらをつなぐための仕掛けが、パビリオンの最後にあるガシャポンのアトラクションでした。

ファサードにも用いられていたガシャポン(これも球体のモチーフ)は、QRコードを読み込んでアンケートに答えると回すことが出来ます。
SDGsにまつわる国連とのコラボレーションしたキャラクターのアイテムが入っています。最後にそれを持って帰ることで、国連、ひいては世界的な課題に少しでも意識を向けてもらいたい、という意図を感じました。

こうしたささやかなアイテムが、どこまで意味があるのかは、もちろんそれを手にする人によるものだと思います。
それでも一方的な展示で終わらせない、壮大な課題を少しでも身近に感じてもらおうというデザインの意図はとてもわかりやすく、素晴らしいものでした。
それが、国連のシンボルマークである円形、球体を一貫して用いながら、全体の統合的なデザインとしてうまく融合していた点は、特筆すべきだと思いました。

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