デザインマガジン🎈Balloon vol.26 「スポーツをするための身体とは何か」と「2024年パリオリンピックのクリエイティブ」

vol.26 「スポーツをするための身体とは何か」と「オリンピックのSNSクリエイティブの比較」
Balloon Inc. 2024.07.17
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<b>©︎ IOC</b>

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デザインマガジンでは、上の句として「デザイン“以外”の話」、下の句として「デザインの話」をお届けします。では早速、「デザイン“以外”の話」から。

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上の句:スポーツをするための身体とは何か

スポーツにおいて勝利するために統計は重要な要素だ。特に野球では、攻守がはっきり分かれていて、ワンプレーの区切りがわかりやすい(ピッチャーが投げる→バッターが打つ→守備がボールを捌くで一区切り)などの理由から統計が取りやすく、監督だけではなくファン—筋金入りの—も統計を重視して野球を眺める。

統計、そしてきっと今ではAIの思考をも組み合わせ、指示されたとおりに身体を動かせるように選手は身体を作り上げる。ミシェル・ヨー…ではなくてミシェル・フーコーが「スポーツにおける訓練や規律は、選手の身体を特定の方向へと変容させ、高いパフォーマンスを生み出すための身体を作り上げていく。これが”規律訓練”の一形態である」と言っていたが、まさにその通りの未来が訪れようとしている。さて、統計の言うとおりに身体を作り上げることは、「スポーツの面白さの追求」ではなく「データへの従属」ではないか?そう考えると、スポーツの面白さは選手の創造性や自発的な判断によるところが大きいのかもしれない。最後に、イチロー選手の引退会見での一節を紹介して終わりとしたい。

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下の句:2024年パリオリンピックのクリエイティブ

スポーツといえばあと10日ほどで2024年パリオリンピックが開催されますね。夏季オリンピックとしては33回目にあたります。特徴的なのはセーヌ川沿いやトロカデロ広場などパリ市内の象徴的なロケーションが競技会場となる点で、こうした都市の中にあるシンボリックな建造物をモチーフにしたSNSのクリエイティブが祝祭感を盛り上げています。

今回は、主に2024年パリオリンピックで公式アカウントで用いられるデザインやSNSのクリエイティブについて取り上げて見ていこうと思います。

<b>©︎ IOC</b>

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こちらは大会エンブレムのデザインです。テーマカラーはゴールドで、シンボルの下側にある唇は、フランス共和国の自由を象徴する女性像「マリアンヌ」をイメージしたものとのこと。髪のシルエットは聖火の炎を想起させるデザインです。

カーブのみを用いて造形されていること、また唇の形や髪の描き方が女性的であることも寄与してか、柔らかなフェミニンな印象を与えるものです。1900年に開催された第2回目のパリオリンピックでは、オリンピック史上初めて女性が競技者として参加した大会とのことです。そうした歴史をふまえてのデザインなのかもしれません。

オリンピックとパラリンピックで「同じ」エンブレムデザインである点は、本当に素晴らしいですね。本来は差を付けるものではないでしょうし。

<b>©︎ IOC</b>

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エンブレムのデザインが決定した後、ビジュアルコンセプトとして上のようなデザインが発表されています。

フランスの都市を象徴する「石畳」のような形状で、エンブレムのゴールドに加えてピンクとブルーの色味が加えられたデザインです。色相のコントラストは大胆ながら、彩度明度が抑えられており、全体的に品のある落ち着いた印象にまとめられています。

描かれているモチーフを見ると、凱旋門などパリを代表するモニュメントや、競技用のボールといったフォルムが見つかります。

その後SNSでのクリエイティブを見ると、このビジュアルコンセプトは結構うまく機能しているようです。

<b>©︎ IOC</b>

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こちらは300〜10日前までのカウントダウン用のクリエイティブデザインの一部です。

なぜか使用されている書体は3種類あり、それぞれが並行して使われています。日にちが近づくにつれてA案に収束していることから、A/Bテストのような施策を行っていたのかもしれません。

狭いエリアに情報をコンパクトにレイアウトする必要があるSNSでは、長体のかかった密度の高い文字組が可能な「A」の書体はマッチしているように思います。

「B」の書体はエンブレムにも使用された独特のグリフを持つデザインで目を惹きますが、ストロークの間の隙間が狭く、小さく用いた時の可読性にやや難がありそうです。

「C」、特に300日前のものはデザインとしてやや品質が低く、全体的に散漫なイメージですね。

どのデザインも写真をベースにフィルターをかけたようなイメージを前面に用いており、(この規模感のデザインで)トーンやマナーが大きくずれていないのは驚きです。

<b>©︎ IOC</b>

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ボールやバット、トラックのデザインはこのようなものが公開されています。こちらもビジュアルコンセプトに準拠した色使いで落ち着いたトーンが見て取れます。

特に色味としては珍しいブルーのトラック。こちらは大会史上初とのことで、全体の面積も大きいことからかなり印象のコントロールに寄与するものと思われます。書体の選定といい白線とのコントラストといい、綺麗にまとめられています。

<b>©︎ IOC</b>

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ユニフォームはフランスを代表するラグジュアリーブランド、ルイヴィトンによるもの。先ほどのプロダクトがまとっていたカラーとは正反対の、非常に落ち着いたアースカラーでまとめています。

結果的に生地の品質、縫製やディティールなどが強調されています。アスリートファースト、競技者ではないスタッフはあくまでもサポートに徹する、という姿勢が顕れているようにすら感じます。

表彰台も同じく無彩色、明るいグレーをベースにしたもの。レリーフのように所々立体的なモチーフがあしらわれており、五輪のエンブレムが映えます。こちらも選手が目立つように配慮された色使いで綺麗ですね。

<b>©︎ IOC</b>

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個人的に圧巻だったのは、この公式ポスターに採用されたイラストレーションです。パリの象徴的なモニュメントをおさめながら、全ての競技者が描かれているそうです。

非常に多くの色を使いながら、巧みに彩度や明度がコントロールされており、細部も全体も見応えのあるものです。意外なことにフランスの国旗で使われるトリコロール(赤青白)は使われておらず、オレンジや水色などへ色味をややシフトさせているのも興味深いです。

こうして見ると「2024年パリオリンピック」のクリエイティブデザインは、(ばらつきはあるものの)どれも意図をはっきり感じる素晴らしいものだな、と思います。

これから大会が始まると、これらのデザインはより広範に、様々なシーンで見かけることになると思いますが、そうしたケースでどこまで「デザインの耐久性」があるかを注視していきたいと思います。

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おわりに

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