デザインマガジン🎈Balloon vol.33 新しいタッチテクノロジー
ブランディング・UX・グラフィック・プロダクト・UI・Webサイトなどクリエイティブ全般をカバーするデザインコンサルティングスタジオ Balloon株式会社がお届けするデザインマガジンです。
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今回のデザインマガジンでは世界のデザインニュースをBalloonの視点で紐解いていきます。
取り上げるニュースはこちら。
点字テキストや触覚グラフィックをリアルタイムで表示する新しいデジタル機器が次々と登場しています。研究者たちは最終的にはタッチで追える動画やスポーツ中継も表示できる方法を模索しているとのこと。これまでにもそうしたデバイスは数多くありましたが、イノベーションは数十年にわたって停滞していると言わざるを得ません。
視覚障害用文字としての点字はフランスが発祥です。 もともと軍人用に夜間でも触覚だけで読める暗号用文字として使っていたものを、1825年、パリ訓盲院の教師だったルイ・ブライユが視覚障害者用の文字として改良し、現在の6点点字を考案しました。
およそ100年後の現在でも、デジタル点字機器は決して扱い易いとはいえず、高価で、機能も限られているのが現状です。
今回取り上げるニュースは、そうした点字に関する新しいデバイスとその展望にまつわるものです。
ニュースで触れられているのは韓国のメーカー、ドット社の新しいデバイスです。同社が開発した電磁気システムは、デジタルパッドの表面で何千もの小さなピンを上下に動かすことで点字を表示します。
2015年に設立されたドット社は、2016 年には Dot Watch という触覚スマートウォッチを発表しました。(日本でもクラウドファンディングのプロジェクトとして公開されています)これは磁石と電磁気技術を使用して、4つの点字セル (文字) で時刻を表示できるものです。
ベゼルの細い精緻でシンプルなデザインですね。点字表示用に上下に移動するピン(とそのストローク)があることを考えると、腕時計として成立する薄さまで小型化されているのは素晴らしいですね。
Dot Pad は、この Dot Watch の技術を基に、韓国科学技術院と協力して開発したデバイス。
こちらもデザインはシンプルでフラットな板のようですね。点字表示用のディスプレイが上下に2箇所あるのが特徴的です。 左右のページ送りのボタンに加え、中央に4つのファンクションキーが配置されています。触覚だけでもわかるように、形状に大きな差が設けられている点も興味深いです。
iPad とほぼ同じ大きさで320個の点字セルがあり、テキストのほかグラフィックや画像も表示できます。ユーザーは接続されたコンピューターやスマートフォンからコンテンツにアクセスし、それを点字で表示できます。コンテンツはリアルタイムで更新されるうえ、Dot Pad はAppleデバイスと互換性があり、Apple の VoiceOver でも動作するとのこと。
この技術を活用した、今回のWSJのニュースで紹介されていたデバイスがこちらの「モナーク」。
アメリカ盲人印刷協会がドットの技術を使って、ノートPCサイズのデバイスを9月に発売しました。モナークのディスプレイには10行の点字が表示され、生徒が教科書を読みやすくすることを目指しているとのことです。
このモナークは(Dot Pad とは異なり)他のパソコンなどと接続する必要の無いスタンドアローンで動くデバイスです。点字キーボードが付属し、ワード プロセッサでは、これまでは利用できなかったヘッダーや段落などの書式設定が可能。
とはいえこれらのデバイスは依然として高価で、米国では Dot Pad が12,000 ドル以上で販売されているところもあるそうです。ドット社は、2025年にはこの機器が視覚障害者の感覚運動学習に効果があるかを調べる臨床試験を開始する予定で、成功すれば保険適用につながる可能性があるとのこと。こうした取り組みによって普及に弾みがつくかもしれません。
数ヶ月ほど前になりますが、SNSでとても興味深い視覚障害者用デバイスが話題になっていました。「SuperBrain 1」という名称の、HMDのように頭に装着するデバイスです。
目の見えない状態でもこのデバイスを付けることで、壁や障害物を避けたり、人と握手したりする様子が見られます。とても感動的なシーンです。
紹介動画などをみると額にあたるパーツからピンが飛び出す機構が見て取れます。これだけのフィードバックで、三次元的な空間把握をどう行うのかは大変興味深いところですね。
とはいえこちらもかなり高価なデバイスであることには変わりないようです。より多くの必要としている人たちに普及し、手に入りやすい価格になるといいですね。
今回のニュースで紹介されたデバイスはいずれも、プロダクトデザインとして非常に完成度が高く、視覚的にも美しい仕上がりとなっています。その結果、こうしたデバイスを使う人々に対して、洗練された印象を与えることができる点は素晴らしいのではないでしょうか。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございました!デザインマガジン🎈Balloonは毎月2回配信予定です。本メールマガジンの感想や質問などをSNSに投稿していただけると嬉しいです。次回配信もお楽しみに!
昨年に続き、大阪芸術大学デザイン学科 清水 柾行 先生にお声かけいただき、志水 良 @shimizuryo が「デザインプロデュース概論」のゲスト講師として登壇させていただきました。
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