デザインマガジン🎈Balloon vol.31 「iPhoneからPixelへの移籍の記録〜序章〜」と「スマートフォンのブランドアイデンティティ戦略」

vol.31 「iPhoneからPixelへの移籍の記録〜序章〜」と「スマートフォンのブランドアイデンティティ戦略」
Balloon Inc. 2024.10.01
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デザインマガジンでは、上の句として「デザイン“以外”の話」、下の句として「デザインの話」をお届けします。では早速、「デザイン“以外”の話」から。

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上の句:iPhoneからPixelへの移籍の記録〜序章〜

iPhone16の発表を見て、Pixelへの機種変更を決めた。

かつて「あなたたちが必要としているものはコレだったのです!」とジーンズのポケットからiPhoneを出したスティーブ・ジョブズ、先日の発表会で「あなたたちが必要としているものはコレだったのです!」とiPhone本体のサイドにカメラのボタンを一つ増やしたティム・クック、「増やすべきはカメラボタンじゃなくてAI(Apple Intelligence)ボタンだったんじゃないかな」と思う私。

もはや新品の原付バイクくらいの価格帯やん。iPhoneは道路を走れないけど、原付は道路を走れるもんな。

iPhoneと、原付と、それから私、みんなちがって、みんないい。(突然の金子みすゞ)
ということで、Pixelに機種変更をしてみた。(Pixelに移籍したあとの苦悩を熱烈に綴りたいと思っているのですが、現在進行系で苦悩しているので、苦悩を終えてから書きます。)

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下の句:スマートフォンのブランドアイデンティティ戦略

iPhoneやGoogleのPixel、SamsungのGalaxyなどスマートフォンの選択肢は幅広いですが、iPhoneだけは「Appleの」iPhoneとは言わないな…という方が多いのではないでしょうか。Pixelは広告でも「Googleがつくった」と明言している一方で、Appleは企業ブランドとしてiPhoneを位置づけていません(Appleの、という頭語をiPhoneの前に付けることは原則として無いようです)。

そうしたブランドの作り方やアプローチはなかなか面白いなと思いながら、スマートフォンにおけるブランディングに関して調べていると興味深い論文がありました。

2013年と少し前のものですが、AppleとSamsungのブランディングを比較しながらブランド構築のアプローチの違いを論じています。具体的には以下の点、ブランドアイデンティティの展開数の違いです。

  • Appleは複数のブランドアイデンティティを持つ

  • Samsungは単一のブランドアイデンティティを持つ

特にAppleはiPhone以外にもiPodやiPadなどについても(企業ブランドに頼ることなく)個々のブランドアイデンティティを獲得することに成功しています。そうした戦略は当初から一貫しているようで、プロダクトの背面に記載される要素はかじられたリンゴのシンボルマークと「iPhone」のロゴタイプのみです。シンボルマークは配置されながらも、Appleという社名を示すロゴタイプは最新版のiPhone 16に至るまで一切配置されていません。この点は「Apple Watch」と真逆の戦略で興味深いですね。

一方SamsungのGalaxyシリーズは、最初から「Samsung」の社名ロゴタイプが最も目立つかたちで配置されています。Galaxyのロゴタイプが入るのは実に6代目、S6になってからです。あくまでSamsungブランドを立てる、単一ブランドアイデンティティによって展開しています。

論文では、ターゲットとする顧客のレンジや価格帯など様々な要因を紐解きつつ、それでもなお

iPhone はブランドアイデンティティとイメージの構築方法において Samsungよりも優位に立っている

と位置づけています。

一方で、SamsungのGalaxyシリーズが消費者に受け入れられていないかというとそんなことはなく、欧州ではAppleをしのぐシェアを獲得しているのも事実です。彼らの進めるブランド戦略は、Samsungという企業ブランドの持つラインを拡張するものです。

こうした2つ(以上)の異なるカテゴリーの製品に同じブランド名を使用することによって引き起こされるブランドの毀損を「ライン拡張の罠」と言い、一般的に忌避されるものとされます。Samsungは、そうした「ライン拡張の罠」に陥らず、(Appleとは異なるターゲットにリーチした)稀なブランドと言えるのではないでしょうか。

そうした観点からも、Appleとは異なるアプローチによってSamsungはSamsungらしいブランドアイデンティティを構築したのでは?と思えます。

GoogleのPixelシリーズはというと、プロダクトデザインには一切「Pixel」のロゴタイプは入っていません。最初のシリーズから企業ブランドの頭文字「G」のみが背面に配置されています。

歴代の商品写真だけを見ても、UIの画面にも製品にも一切のプロダクトブランド(Pixelの文字列)の痕跡は排除されており、かなり強い意図を持ってライン拡張を避けているように思われます。

そういえば「Apple Vision Pro」もWatchと同じくAppleの企業ブランドを引用した単一の製品ブランド展開を行っていますね。ブランドの認知度向上とアイデンティティ構築には、ロゴマークと名称の両方が重要な要素です。それぞれの特性を理解し、状況に応じて戦略的に使い分けることが求められます。こうした比較的新しいヘッドマウントディスプレイのようなブランドアイデンティティが、今後どのように展開されるのか、注視していきたいと思います。

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おわりに

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